他人の腹痛
幼いころから知っていた。
私が腹痛でうずくまっていても、他人ましてや家族も友達も誰もつらそうではないということ。
私が泣き叫んでみせても、誰も解決はしてくれないし、痛みもわからないんだということ。
だってそりゃそうだよ。誰もあの古い牛乳に当たらなかったんだもの。
だから案外平気な顔をしてる。
私が「ああもう死んじゃいたいな」なんて言っても。みんな大丈夫。自分の生死には関わらないしね。
暗い部屋で一人毎日泣き続けても伝わらないのは当たり前だけど、言葉を練って丁寧に状況を話してみても伝わらないもんは伝わらないのだ。
中には「私もそういう時あるよ」とか「つらいね。部屋を明るくするとこから始めたらどう?」なんて答えてくれるひともあるだろう。
だけどあなた。忘れちゃだめですよ。
同じ親から生まれて、同じ友達がいて、同じ恋人に振られ、同じ会社をやめた人間なんていないんだって。
あなたの苦しみはあなただけのものだ。
絶対誰にもわからない。それでもって私もあなたもお互いのつらさをわかることはできない。
これってめちゃくちゃ悲しくないですか。
でもその悲しみもあなただけのものです。
ほら、自分だけの何かを探してるって、そう言ってたじゃない。
いまさら何をそんな必死になってるんだ。
もう何十年も前からあったでしょ。知ってたでしょうよ。