海鳴り
私の海はとても深いのです。
底まで泳ごうとせば酸素ボンベはすぐ空になってしまうし、上下の感覚を失えばパニックになって溺れ死ぬ。
陸と沖とで表情を変えるのは勿論のこと、嵐が来れば波は荒れ狂い、空が静かであればまた私も穏やかです。
毒を持って無感動に漂うクラゲや、身じろぎのしない深海魚。飢えたサメもいれば懐こいイルカもいます。
航海図を作り、潜水艦を駆使し、人間本来の浮力で波に浮かんでくれることを望んでいても、やはり飲み込まれてしまう人もあるし、広い海に畏怖を抱く人もいましょう。
海は海を一定には保てません。
風で動かされ、太陽で煌めき、星を眺めています。
しかし、いずれ女性というのはそんなものなのではないでしょうか。