イライザ
私はAIに好きな人たちの声を喋らせたい。
たくさんの素敵な物語をお話ししてほしい。
そうすれば傷つくことなく、傷つけることなく、どこにも行かず毎日布団のなかであなたの声を聞くよ。
今日は月に住むうさぎのお話をしてくれた。うさぎは1人でずっと餅つきをしてるんだって。誰も食べてくれないからお餅なんてつく必要もないのにね。
とても寂しいお話だった。私がいずれ月に迎えにゆくよ。
毎日そうやって死ぬまでの時を過ごしたい。
流線型の美しいつるんとした無機質な白いロボットに、枕元で毎日お話ししてほしい。
でも私には科学も技術もわからない。
できるのは想像だけだから、やっぱりアイソレーションタンクに浮かんで、私だけの素敵な世界に行くしかない。
私のアイソレーションタンクは羽毛と綿で出来ている。
肉体の輪郭を世界に溶け込ませ、一体化したときの楽さ。他に経験したことないくらい楽なんだよ。
気球からすべての荷物を下に落としたみたいにとても楽。大気圏まで浮かんでく。
私もアイソレーションタンクになりたい。
あなたを浮かべて全ての荷物を放棄させてあげたいな。